「ついでに母子手帳、見せていただけますか」
こんにちは。医療法人社団aQuaです。10月に入り、3院の受付はインフルエンザワクチンのご予約と接種でにぎやかになってきました。この時期は、ふだんは体調が悪いときにしか来院しないお子さんも、元気な状態で来てくださいます。そして多くの保護者が母子健康手帳(母子手帳)を持ってきてくださる。じつはこれが、定期接種の打ち忘れを見つける一年でいちばんのチャンスです。
「インフルの予約を取りに来ただけなんですけど…」とおっしゃった方の母子手帳を一緒に開いて、「あ、MRの2回目がまだですね」と気づく。診察室でも受付でも、10月は本当によくある場面です。今日は、秋のうちに点検しておきたい接種について整理してみます。
その前に、いまの3院の様子
まず現状です。インフルエンザA型と診断した人数は、3院を合わせると第39週(9/21〜9/27)の306人をピークに、第40週232人、第41週(10/5〜10/11)156人と、ここ2週は少しずつ減っています。
| 週 | 小岩 | 市川院 | 東池袋院 | 3院合計 |
|---|---|---|---|---|
| 第38週(9/14〜9/20) | 90 | 88 | 40 | 218 |
| 第39週(9/21〜9/27) | 106 | 143 | 57 | 306 |
| 第40週(9/28〜10/4) | 97 | 116 | 19 | 232 |
| 第41週(10/5〜10/11) | 66 | 72 | 18 | 156 |
ただし、減ったから終わり、とは考えにくいところです。第41週も3院で156人の方がA型と診断されていますし、小岩で1人、市川院でも第40週に1人、B型の診断がありました。発熱やせきなどの呼吸器感染症全体でみると、第41週は小岩526人・市川院493人・東池袋院200人の合計1219人で、夏の終わり(第34週は3院で523人)の2倍以上です。例年の経過から推測すると、冬にかけてもうひと山来る可能性は十分あると考えています。だからこそ、流行が少し落ち着いているいまが、接種の計画を立てるのに向いた時期です。
受付でよく見つかる「打ち忘れ」ベスト3
以下は集計データではなく、あくまで当法人3院のスタッフが日々の受付で感じている印象です。それでも、同じ場面を何度も見ています。
1位 年長さんのMR2期
MRは麻しん(はしか)・風しんの混合ワクチンです。1期は1歳のとき、2期は小学校入学前の1年間に受けます。1歳の接種は健診や他のワクチンと一緒に流れで進むのに対し、2期は「年長さんの一年間のどこかで自分で予約する」形になるため、気づかないまま年度末が近づきがちです。
2位 9歳ごろの日本脳炎2期
日本脳炎は3歳で2回、4歳ごろに3回目(1期追加)、そして9歳以上13歳未満で2期を受けます。4歳から9歳までの空白が長く、「前に打ったのはいつだったか」が記憶から抜けやすい接種です。
3位 11歳ごろの二種混合(DT)
ジフテリアと破傷風のワクチンで、11歳以上13歳未満が対象です。小学校高学年になると母子手帳を開く機会自体が減り、自治体からのお知らせも見落とされやすくなります。
このほか、水痘(みずぼうそう)の2回目や、B型肝炎・ヒブ・小児用肺炎球菌などの最終回が1回分だけ残っているケースもあります。母子手帳のワクチン記録ページを上から順に指でなぞって、空欄を探してみてください。
年長さんのMR2期は3月31日まで
MR2期の定期接種としての期限は、小学校入学前年度の3月31日です。今年度でいえば2027年3月31日。1日でも過ぎると公費の対象外となり、原則として自費での接種になります。
そして例年、2月・3月は駆け込みのご予約が集中します。受験や卒園行事、きょうだいの体調不良、そして冬の感染症の流行が重なり、「予約が取れたのに当日熱が出てしまった」という事態も起こります。発熱時は接種を見送りますから、期限ぎりぎりだとやり直しの余地がありません。
年長さんのご家庭は、できれば秋から年内のうちに1回分の枠を確保しておくと安心です。インフルエンザワクチンの予約を取るこのタイミングで、「MRはどうなっていますか」と受付でひと声かけていただければ、母子手帳を一緒に確認します。
学童期に見落としやすい接種
小学生以降は、ワクチンの話題そのものが家庭から遠のきます。目安として覚えておきたいのは次の3つです。
- 日本脳炎2期:9歳以上13歳未満(標準は9歳のうち)。1期が途中で止まっている場合の取り扱いは、年齢や接種歴によって異なります。母子手帳を持って一度ご相談ください。
- 二種混合(DT)2期:11歳以上13歳未満(標準は11歳のうち)。
- HPVワクチン:小学6年生から高校1年生相当の女子が定期接種の対象です。合計2〜3回の接種を数か月かけて行うため、学年の後半から始めると年度内に終わらないことがあります。対象や公費の条件は江戸川区・市川市・豊島区それぞれで案内が異なりますので、お住まいの自治体の通知もあわせてご確認ください。
「うちの子、これで全部終わっていますか?」というご質問は、接種の相談としてお受けしています。母子手帳をお持ちいただければ、残っているものと、受けるとしたらいつが良いかを一緒に整理します。
インフルとの同時接種はできる? 間隔と予約のコツ
よくいただく質問です。考え方の基本は次のとおりです。
- インフルエンザワクチンは不活化ワクチンで、他のワクチンとの接種間隔の制限は原則ありません。接種した翌日に別のワクチンを受けることもできます。
- MRや水痘、おたふくかぜなどの注射の生ワクチン同士は、同じ日に受けない場合、27日以上あける必要があります。たとえばMRとおたふくかぜを別々の日にすると、次が約1か月後になります。
- 医師が必要と認めた場合、複数のワクチンを同じ日に接種(同時接種)することができます。来院回数が減り、接種が遅れにくくなる利点があります。
どの組み合わせにするかはお子さんの接種歴や体調によって変わりますので、予約の段階で「インフルと一緒にMRもお願いしたい」とお伝えいただけると、枠やワクチンの準備がスムーズです。なお、接種後に体調をくずすこともありますから、翌日に大きな行事がない日を選んでおくと気が楽です。
3院はいずれも年中無休ですが、予防接種の受付時間や予約方法は院ごとに異なります。各院のホームページ、またはお電話でご確認ください。
接種の前後に熱が出たときは
この季節、接種の予定日に熱が出ることは珍しくありません。インフルエンザが疑わしいときは、元気があれば発熱から24時間以上たってからの受診をおすすめしています。発熱直後は検査が陰性になりやすいためです。
ただし、ぐったりしている、顔色が悪い、呼吸が苦しそう、水分がとれない、けいれんがある、生後3か月未満の発熱といった場合は、時間にかかわらず早めに受診してください。夜間や休日に迷うときは、こども医療でんわ相談 #8000 もご利用いただけます。
解熱後にいつからワクチンを受けられるかは、病気の種類や経過によって異なります。受診の際に「このあとのワクチンはいつから打てますか」と聞いていただければ、目安をお伝えします。
今週の流行は各院のページで
3院では毎週、診断した感染症の人数をまとめて公開しています。園や学校で何が流行しているかの見当をつける材料としてご覧ください。
母子手帳は、お子さんの健康の記録であると同時に、これから何をすればいいかの地図でもあります。インフルエンザワクチンでご来院の際は、ぜひ一緒に持ってきてください。空欄が見つかっても慌てなくて大丈夫、いつまでに受ければよいかを一緒に考えます。
髙木 虎太郎
記事監修
医療法人社団aQua理事長 髙木 虎太郎
国立大学法人 滋賀医科大学 医学部医学科 卒業
慶應義塾大学医学部小児科
慶應義塾大学関連病院
埼玉県立小児医療センター血液腫瘍科
日本小児科学会小児科専門医、日本血液学会血液専門医

