診察室で「え、もうインフルエンザですか?」が増えています
こんにちは。医療法人社団aQuaです。
「昨日から熱が出て……でもまだ9月ですよね?」
ここ数日、診察室でこうしたやりとりが本当に増えました。検査をすると、インフルエンザの陽性を示す線がはっきり出る。保護者の方が驚かれるのも無理はありません。例年、インフルエンザが目立ちはじめるのは11月から12月ごろで、今年はそれより2か月以上早いことになります。
当法人が運営する3院(アクアキッズクリニック市川院・小岩院・東池袋院)では、9月第1週(第36週)の1週間だけで、合計127人のお子さんをインフルエンザと診断しました。数としても、時期としても、例年とはかなり違う立ち上がりです。
今回は、3院で実際に見えている数字をお示ししながら、いま保護者の方にできることを整理してお伝えします。
3院の数字で見る、今シーズンの始まり
当法人では、各院で診断した感染症の人数を毎週集計しています。直近2週間と、昨年(2025年)の同じ時期の人数は次のとおりです。
| 院 | 第35週 | 第36週(9月第1週) | 昨年(2025年)同時期 |
|---|---|---|---|
| 市川院 | 33人 | 87人 | 8人 |
| 小岩院 | 20人 | 28人 | 1人 |
| 東池袋院 | 2人 | 12人 | ―(2026年1月開院) |
| 3院合計 | 55人 | 127人 | ― |
1週間で55人から127人へ、およそ2倍を超える増え方です。特に市川院は33人から87人と大きく動きました。昨年の同じ週は市川院で8人、小岩院で1人でしたので、地域によって差はあるものの、今年はかなり早い時期から動きが出ていることが分かります。
一方で、東池袋院は第35週で2人、第36週で12人と、市川・小岩に比べるとまだ少ない状況です。同じ法人の3院でも、地域ごとに流行の時期や勢いにはずれがあります。「隣の駅ではもう流行っている」ということは、これから起こりうると考えておくとよいかもしれません。
どうして今年はこんなに早いのでしょうか
まず正直にお伝えすると、「これが原因です」と言い切れる答えは、現時点ではありません。ここから先は、一般的に指摘されている背景の紹介であり、当法人としての推測を含みます。
- 今年は夏の時期にも海外でインフルエンザの流行が報告されており、その流れが途切れないまま秋に入った可能性があります。
- 旅行や大人数のイベントなど、人の行き来が活発になっていることも、広がりやすさに関係しているかもしれません。
- 前のシーズンに感染した人が少ない年のあとは、集団としてウイルスに対する備えが弱まり、流行が早まったり大きくなったりすることがある、とも言われています。
いずれも「そう考えられている」という段階の話です。ただ、原因がはっきりしなくても、ご家庭でできる備えは例年と同じで、少し前倒しに始める、というのが実際的だと考えています。
いま、ご家庭でできること
1. ワクチンは「例年どおり」より少し早めに
インフルエンザワクチンは生後6か月から接種できます。13歳未満のお子さんは、2〜4週間の間隔をあけて2回接種するのが原則です。効果が出てくるまでには接種後2週間ほどかかるとされているため、2回終えるまでには1か月以上を見込んでおく必要があります。
「毎年11月に打っています」というご家庭も、今年は少し前倒しでご検討いただくとよいかもしれません。当法人では3院とも予防接種のご予約を受け付けています。ワクチンを打っていても感染することはありますが、重い症状を防ぐことが期待されています。
2. 受診の目安は「発熱から24時間以上たってから」
インフルエンザの検査は、発熱してすぐだとウイルスの量がまだ少なく、感染していても陰性になることがあります。熱が出て元気があるようなら、発熱から24時間以上たってからの受診をおすすめしています。そのほうが検査の結果が信頼でき、必要な薬もきちんと選べます。
一方で、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に飲みはじめると効果が期待しやすいとされています。「24時間はあけて、48時間までに」が目安とお考えください。受診のタイミングに迷われたときは、電話でお問い合わせいただいても構いません。
ただし、時間の目安よりも大切なのはお子さんの様子です。次のようなときは、発熱からの時間にかかわらず、早めに受診して診察を受けることをおすすめします。
- ぐったりしている、顔色が悪い、呼びかけへの反応が鈍い
- 呼吸が速い、苦しそう、肩で息をしている
- 水分がとれず、おしっこが半日以上出ていない
- けいれんを起こした、意味の通らないことを言う
- 生後3か月未満の発熱
3. 登園・登校の目安
学校保健安全法では、インフルエンザは「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」が出席停止の期間とされています。熱が下がってもすぐには登園・登校できない点にご注意ください。園や学校によって書類の様式が異なりますので、必要な場合は受診時にお申し出ください。
4. ご家庭のなかでの工夫
きょうだいがいるご家庭では、家庭内でうつることが少なくありません。完璧を目指すと疲れてしまいますので、できる範囲で構いません。
- 手洗いを、帰宅時・食事前・咳をしたあとに
- タオルや食器を分ける
- 看病する大人はできるだけ決まった人に
- 部屋の換気と、乾燥しすぎない環境づくり
- 症状のある人はマスクを(小さなお子さんは無理をさせないでください)
3院で診ているからこそ、早く気づけること
当法人の3院は年中無休で診療しており、合計すると週に1,000人以上のお子さんを診察しています。そのため、「そろそろ増えてきたな」という変化を、比較的早い段階でつかむことができます。今回の9月の増加も、日々の集計のなかで見えてきたものです。
集計した結果は、各院のホームページの「感染症発生状況報告」ページで毎週更新しています。インフルエンザだけでなく、溶連菌感染症や手足口病、胃腸炎など、地域で今どの感染症が動いているかを確認いただけます。「保育園で何か流行っているらしい」というときの参考にしていただければ幸いです。
心配なときは、遠慮なくご相談ください
9月にインフルエンザ、と聞くと不安になるかもしれませんが、やるべきことが特別に変わるわけではありません。ワクチンを少し早めに検討する、熱が出たら様子を見ながら24時間以上たってから受診する(ぐったりしていればすぐに)、休む期間はきちんと守る。この3つを押さえていただければ十分です。
夜間や休日で受診の判断に迷うときは、こども医療でんわ相談「#8000」もご利用いただけます。お住まいの地域の相談窓口につながり、看護師や医師からアドバイスを受けられます。
3院とも年中無休で診療しています。「これくらいで受診してもいいのかな」と迷われたときこそ、どうぞお気軽にお越しください。
髙木 虎太郎
記事監修
医療法人社団aQua理事長 髙木 虎太郎
国立大学法人 滋賀医科大学 医学部医学科 卒業
慶應義塾大学医学部小児科
慶應義塾大学関連病院
埼玉県立小児医療センター血液腫瘍科
日本小児科学会小児科専門医、日本血液学会血液専門医

